大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)1130号 判決 1958年2月28日

控訴人 友野英男

被控訴人 日本赤十字社

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は「原判決を取消す。別紙目録記載の訴外人等が右目録記載のような被控訴人の役職にないことを確定する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との判決を求め、なお控訴状追完申立書に記載する控訴の趣旨中「被控訴人の定款が無効であることを確定する」旨の判決を求める部分は、それ自体独立した確認判決(確認の訴の併合ないし、中間確認の訴)を求めるものでなく、控訴人が本訴で求めている役職員の地位不存在確認請求の原因をなす定款無効の点につき、中間判決を求める趣旨に過ぎない(特に控訴人提出の控訴状中記録第四七五丁裏及び昭和三十三年二月一日受付最終準備書面一、参照)と釈明し、被控訴人訴訟代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述並びに法律上の意見は、控訴人において「一、(定款に社員総会に関する規定を欠如すること)被控訴人日本赤十字社定款第十一条には、日本赤十字社は社員を以て組織する。と規定しながら社員総会に関する何等の定めをしていない。そして社員のうちから選出された代議員を以て組織する代議員会(定款第三十五条)も、従前主張の理由により社員の代表とは謂えず、到底社員総会の代替をなすことはできないものである。社団法人において社員の意思を述べる機会を与えることは重大な要請であり、社員総会についての規定を欠く定款は社団の性質に反し、無効である。二、(定款第四十八条第二号の規定その他事業の目的に関する定款の規定は無効)

定款第四十八条第二号の規定は、赤十字条約、ジユネーヴ条約その他赤十字指導原理十三条(一九四六年オツクスフオードにおいて開催の赤十字聯盟理事会決議第十二)に定めた諸原則に背馳しており、右原則で定められた以外の権限事項に亘る事業を行うことを規定した前記定款の規定、並びにその他日本赤十字社の行う業務に関する定款の規定は、条約、国際法、国内法、憲法に違反し無効である。三、これを要するに日本赤十字社の定款は全体として民主化を破壊し、一部独裁者に都合のよいように作られ、民主々義の原理に反する無効のものである。」と附加した外は、原判決事実摘示の記載と同一であるから、これをここに引用する。

証拠として、控訴人は、甲第一ないし第六号証、第七号証の一、二、第八ないし第十八号証、第十九号証の一、二、第二十号証のイ及びロ、第二十一号証を提出し、当審証人蜷川新の証言を援用し、被控訴人訴訟代理人は、当審証人岡田好治の証言を援用し、甲号各証の成立を認めた。

理由

控訴人は当審において、控訴状追完の申立書に記載する控訴の趣旨中「被控訴人の定款が無効であることを確定する」旨の判決を求める部分は、それ自体独立した確認判決を求める訴(確認の訴の併合ないし中間確認の訴)ではなく、控訴人が本訴で求めている訴外人等の被控訴人の役職員でないことの確認を求める請求の原因をなす定款の無効につき、中間判決を求める趣旨に過ぎないと主張するのであるから、右は民事訴訟法第百八十四条の中間判決をするにつき裁判所の職権発動を促す趣旨と解すべきところ(従つて確認の訴としての適否を判断する要を見ない)、当裁判所は後記記載の理由により右定款は無効と認め難く、従つてこの点につき中間判決をなすまでもなく、既に終局判決をなすに熟すると認めるから、進んで本訴請求の当否につき次のように判断する。

当裁判所は、当審で新たになされた証拠調の結果を斟酌するも、左記の点を附加する外は、原判決理由第二の項全部(記録第四二九丁表五行目以下第四三九丁表一行目まで)をここに引用し、これと同一理由によつて被控訴人の定款には控訴人主張のように無効と解すべき瑕疵あるものとは認め難く、従つて該定款の無効であることを前提としてなす控訴人の本訴請求は、失当としてこれを棄却すべきものと判断する。

附加する点は左記のとおりである。

(一)  控訴人は当審において、被控訴人定款に社員総会に関する規定を欠如しているのは社団の本質に反し、かかる規定を欠く定款は全体として無効であると主張する。しかし社員の権利については定款第十五条に、社員は一、日本赤十字社法(以下単に法と称する)及びこの定款の定めるところにより、本社の役員及び代議員を選出し、並びにこれらの者に選出されること、二、毎事業年度の本社の業務及び収支決算の報告を受けること、三、本社に対し、その業務の運営に関し、代議員を通じ意見を述べること、などの権利を有する旨を規定し、なお代議員及び代議員会のことについては、定款第五章に詳細に規定せられ、社員の中から選出された代議員で組織する代議員会を以て社員の総意を反映する機関としたことは明らかであり、これら定款の関係規定は少しも法並びに憲法に抵触しない有効のものであることは、前示引用の原判決に説示することろである。そして日本赤十字社法にも代議員会の外に社員総会の設置すべき定めなく、数百万という多数社員を擁する被控訴人のような社団としては、前示代議員会を以て社員の総意を反映せしむべき社員総会に代わるものとしたことは、やむを得ないところであつて、定款に社員総会に関する規定の欠如する故を以て社団の本質に反するものとし、ひいて定款の無効を云為する控訴人の主張は理由がない。

(二)  定款第四十八条第二号被控訴人の事業の目的に関する定款の諸規定が、条約、国際法、法及び憲法に違反し、或は定款の規定が全体として社団の民主化を破壊するとの主張、その他控訴人が当審で提出した準備書面で被控訴人の定款を無効であるとする根拠につき縷々述べている点は、いずれも独自の見解であつて到底左祖することはできない。

してみると原判決中、定款の無効確認を求める控訴人の請求を却下した部分は、この点に関する当審における控訴人の請求の減縮により当然効力を失い、その余の、別紙目録記載の訴外人等の被控訴人の役職員でないことの確認を求める控訴人の請求を棄却した部分は、相当であるから、民事訴訟法第三百八十四条に則り本件控訴を棄却すべく、控訴費用の負担につき同法第九十五条、第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 斎藤直一 坂本謁夫 小沢文雄)

目録

日本赤十字社名誉総裁、同副総裁

一 名誉総裁

皇后陛下 (昭和二十二年一月二十一日奉戴)

二 名誉副総裁

秩父宮妃勢津子殿下 (昭和二十八年三月二十四日推戴)

高松宮宣仁親王殿下 (右に同じ)

同  妃喜久子殿下 (右に同じ)

三笠宮崇仁親王殿下 (右に同じ)

同  妃百合子殿下 (右に同じ)

日本赤十字社現在役員一覧表

一 社長

島津忠承 (昭和三十一年二月十三日就任)

二 副社長

葛西嘉資 (社長と同時に就任)

石坂泰三 (昭和三十一年四月十八日就任)

三 理事

山中鉱一 (昭和二十九年三月二十七日就任)

扇田政勝 (昭和三十年三月二十九日就任)

安田巌 下田武三 白根松介 伊藤謹二 沢田節蔵 下村宏

矢野一郎 前田松苗 大槻繁次郎 春彦一 江崎富次郎 中山正善

関定 田籠勝 新田啓二郎 田中敬三 川村松助 竹谷源太郎

加賀谷保吉 池田正之輔 石原幹市郎 小林静 木村浅七 岸真三郎

綿谷新之助 浮谷竹次郎 代田朝義 山崎昇 村山沼一郎 館哲二

駒井志づ予 宮田七太郎 吉江勝保 狩野精一 福井繁三 村田伝治郎

浅見五郎助 広瀬楢治 松井義重 林雄三 石河大直 星島義兵衛

松坂義正 石田秀二 奥村嘉蔵 中塚卓蔵 得能久吉 筒井元正

山本勝太郎 原忠一 福崎俊多 河津寅雄 草本利恒 久留島初太郎

高附栄次郎 (以上は社長と同時に就任)

黒川武雄 笠原十兵衛 (昭和三十一年四月十八日就任)

四 監事

高橋竜太郎 酒井杏文助 田島道治 (以上は社長と同時に就任)

五 代議員 (社長と同時に就任)

新田啓二郎 小山内清美 池田正之輔 後藤倫 中屋重治 黒金泰美

辻以智郎 鈴木勇 岸三郎兵衛 江野力 依田養七 秋野平治郎

瀬古退助 菅野伊太郎 石原幹市郎 密田米蔵 岡崎栄松 横山宗延

大槻繁次郎 竹谷源太郎 千葉石近 三上盛作 高橋進太郎 高瀬ミチ

山田利忠 内ケ崎賢五郎 大木一夫 杉崎郡作 津村昭徳 高瀬利吉

谷田甚作 加賀谷保吉 八代保 田中敬三 泉太助 友末雅子

伊勢谷竹次 佐藤直太郎 後籐武男 西谷登喜 田中実 宮坂忠長

鈴木春吉 黒木シヅ 横瀬精一 荒井源太郎 長島恭助 皆川五郎

木村浅七 浅見敏 佐久間栄吉 白相一策 宮内三朗 水沢正

矢沢高佳 浮谷竹次郎 渡辺万助 松本義 中野栄三郎 木村源兵衛

池森長三郎 福原実 萩原辰郎 関口志行 土屋幸正 根本茂

伊能芳雄 山崎夫抄子 山口堅吉 岸真三郎 村瀬清 山崎昇

金子金八 岡田昇三 半井清 小金沢喜与治 広瀬俊吉 谷川武

綿谷新之助 代田朝義 相川文五郎 中島一十郎 長島壮行 大竹竹三郎

木村新一 清水三郎 西川熊三郎 佐藤栄太郎 熊谷友一郎 大村直

村山沼一郎 遠山一郎 大沢重右衛門 柳沢新太郎 山岸保 吉川為三郎

川澄農治 笠原十兵衛 福井繁三 亘四郎 水野鼎蔵 江崎富次郎

館哲二 三輪勝治 祖父江仙松 佐藤助九郎 溝口掬 中川益平

金岡好造 本田秋憲 竹中七郎 岡田清 渡辺清男 高木高治郎

谷本与三次郎 山田順策 神野太郎 村佐一 山形文雄 杉本竜造

宮田七太郎 長野宇恵茂 服部栄門 宇野友八 大竹十郎 岡山三治郎

秋山真男 狩野精一 樋口松太郎 今井政右衛門 青柳仲三 石河大直

吉田秀三郎 松井義重 尾崎卓郎 富井新太郎 石見元秀 熊野英

富都五郎 中須義男 星島義兵衛 高田熊三郎 藤岡今次 石井順一郎

大槻嘉男 前田菊治 佐藤敏夫 池永辰次郎 河瀬脩二 片山仁

因野佐一 広瀬勝代 水島計次郎 橋本源治郎 田口猪之助 宮中

西田公一 吉川島次 山口精一 西田伝三郎 奥村正信 砂田昌男

和田芳一 林雄三 松坂義正 深田丈夫 楠瀬寿々 豊島明男

南利三 森田秀雄 西原直 広瀬楢治 林原正二 坂本康治

八百屋収 山本勝太郎 中原新吾 正本嘉一 竹内清之助 市原キヨ

石田秀二 柿原種雄 佐藤寿子 原菊太郎 吉田彦 草本利恒

朝桐猪平 田籠勝 安東玉彦 中塚卓蔵 林信雄 菅昇

細渓宗次郎 内野梅子 久留島初太郎 塩田忠左衛門 原忠一 大野英男

尾崎久馬 大山利八 清水善左衛門 得能久吉 田川務 高附栄次郎

関定 福崎俊多 川崎八重 松本和芳 松浦規 奥誓二

小畑豊馬 本田規矩雄 白浜重任 坂本重寿 林田正治 永田良幹

加来繁雄 河津寅雄

東京都支部

支部長

安井誠一郎 (社長と同時に就任)

評議員

村瀬清 倉畠延三 森らく 水沢正 野宗英一郎 横地仙太郎

山本泰介 川端京五郎 中西清太郎 真鍋勝雄 吉田藤作 島本正一

岡田昇三 岩田正文 藤井豊吉 広瀬俊吾 斎藤喜一郎 子安市郎

山根静人 代田朝義 結束宗一 立花種忠 芦田イマ子 山口久太郎

長島壮行 上杉清一郎 浅田鎌太郎 田中実一郎 日比野ヤエ 林信助

松本孝二 那須信吾 大滝スエ 斎藤恒助 皆川五郎 佐久間栄吉

川本達人 小川孝之助 高木敏雄 石毛慶次郎 小沢藤太郎 佐藤富一郎

宮坂忠長 堀内糸 市川陸奥磨 小林吉之助 高木惣市 助川捨次郎

大川原えん 安藤金吾 村上勇三郎 永井千春 渡辺万助 藤井豊乃輔

榎戸米吉 富田滋 小林茂一郎 与謝野光 増田嘉一郎 藤岡清則

山岡柳吉 前沢慶治 関根通仲 春彦一 番場憲隆 勝田菊蔵

高橋清人 横瀬精一 青山藤吉郎 大塚日現 吉竹続 似鳥幾久栄

木村源兵衛 今西まき (以上は社長と同時に就任)

神奈川県支部

支部長

内山岩太郎(社長と同時に就任)

評議員

半井清 山崎昇 野村洋三 横山文治 中井一郎 相川文五郎

中村新治 松沢由真 柳川熊次郎 小金井輝一 飯山藤三 加藤木保次

太田亥十二 谷川武 小島兼太郎 山本忠頼 須藤英雄 潮田輝義

亀井信次郎 石井太郎 三上和助 戸川貞雄 武居一重 武久徳太郎

内山常吉 杉山茂 鈴木十郎 藤原宗夫 出口肇 井上博

山田俊介 曾根田恭男 四方田栄三 渡辺正吉 中村新治 飯山藤三

加藤熊吉 小磯武二 (以上は社長と同時に就任)

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